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「そうですよね。貴女は、そういう人だ」
「何笑ってるんですか」
膨れるとシオンさんが私達の所へやってきた。
「団長」
「おかえり、シオン」
「この度は勝手を言って申し訳ございませんでした」
シオンさんがチェイスさんに対して頭を下げる。
そんなシオンさんを見て微笑むチェイスさん。
その顔は明らかにホッとしていた。
皆、きっと諦めていたんだろう。
だってあの傷は間違いなく致命傷だった。
にゃん太郎が見つけなければシオンさんは今頃……。
「にゃん太郎が居てくれてよかった」
そう言うとにゃん太郎が小さく鳴いた。
「あ、そうだ。チェイスさん」
「どうかされましたか?」
「私、自分のご飯は自分で作りたいんですけど」
「え?」
「この世界のご飯、私とにゃん太郎の口に合わなくて……。街のカフェに行って自分で作ってみたら意外とうまく出来たんです。だから、出来ればそうしたいなって思ったんですけど……。難しいですか?」
「いえ。レイ様に不自由をさせるなという陛下のご命令です。レイ様がされたいのであれば止める事はいたしません」
「ありがとうございます!」
チェイスさんにお礼を言ってにゃん太郎と一緒にお城の中に入る。
相変わらず迷路みたいになっていて、迷いながらも何とか部屋まで辿り着いた。
にゃん太郎をベッドの上に下ろすと、にゃん太郎は欠伸をして寝る体勢になった。
私も隣に横になる。
自分の手を見つめて、シオンさんに吸い込まれていった綿毛を思い出した。
「治癒魔法使い……か」
どうやってシオンさんを治せたのか分からない。
希少な存在って言われてもピンとこない。
でも……
「なんか、異世界っぽくてカッコいい!!」
目をキラキラさせているとにゃん太郎が私の腰あたりにお尻をくっ付けて眠った。
そういえば、シオンさんが言っていたあれ……
「『その者、猫を連れてやって来る、国の救世主である』、だっけ?あれってなんだったんだろう?」
気になるけど、多分私には関係ないよね。
そう思った私は欠伸をした。
ちょっと寝ようかな。
まだまだ慣れない異世界生活。
これからも楽しい事いっぱいあったらいいな。
そう思いながら私は眠りに落ちた。
森の奥の小さな小屋。
小さな男の子の隣で大きな狼のような姿の魔獣は眠っていた。
そんな魔獣の頭を撫でながら男の子は歌を歌っていた。
「『騎士団、国の希望の星。皆を守ってくれる英雄達』……」
歌うのを辞めた男の子は真っ暗な空を見上げた。
「じゃあ、どうして誰も助けてくれなかったの……?」
男の子の目には真っ暗な闇しか広がっていなかった。
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