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「道が光って……そしたらここにいた、って感じです……」
そう言うと男の人は目をパチパチとさせてから興味深そうに私を見た。
「女神様が二人も召喚された事例は今までありません。これは不具合でしょう。しかし、これはとても興味深いですね」
「え?」
「あの、すみません。こちらの不具合で間違って貴女を異世界から召喚してしまったようです。しかし、残念ながらこちらの世界にお呼びする事は出来ても元の世界に帰して差し上げる方法は分かりません。申し訳ございませんが、こちらの世界で生活していただければと思うのですが」
間違い、だと?
その間違いで私は明日から大学に行かなくていいと?
異世界で生活しろと?
友達にももう会えないかもしれないって事?
それって……
「悲しいけど、超ワクワクする……」
「え?」
「いえ!こちらの話です!こちらの世界については何も知らないので、出来れば教えていただきたいのですが!」
私がそう言うと男の人は驚いてから噴き出した。
え、なんで?
「す、すみません。意外な反応でしたので、つい。もっと泣いたりするかと思いました」
「泣いてどうするんです?泣いても帰れないんでしょ?それなら全力で異世界を堪能しないと勿体ないと思うんですよ」
「なんとたくましい考え方。俺は貴女の考え方、嫌いではありません」
男の人は笑顔で私に手を差し出した。
男の人の手を掴んで立ち上がる。
そして男の人は私に頭を下げた。
「申し遅れました。俺はオーリア王国の魔法騎士団団長、チェイスと申します」
「私は玲です!よろしくお願いします!」
「レイ様ですね。こちらこそよろしくお願いいたします。こちらの間違いですので、是非ともレイ様には王宮で生活をお願いしたいのです。いかがでしょうか」
「え!?お城!?住めるんですか!?凄い!!」
ワクワクしているとチェイスさんは笑った。
「そちらの猫はレイ様の飼い猫でしょうか?」
「あ、いえ。にゃん太郎は飼いたかったのですが飼ってあげられなかった猫なんです。だから、この世界で飼ってあげてもいいなら……」
「もちろんでございます。にゃん太郎様のお食事もご用意しないといけませんね」
「それは物凄く助かります!!」
チェイスさんについて行って部屋を出る。
広い廊下、沢山の人。
豪華な装飾に目を奪われる。
「あ、あの。女神召喚って何なんですか?」
そう聞くとチェイスさんは笑顔で教えてくれた。
「この国では負の感情を持った魔法使いが心を闇に支配されてしまい、存在している生き物を恐ろしい魔獣と呼ばれる怪物にしてしまう事があるのです。もちろん、王国はそのようなことが無いように人々の心の管理もしています。カウンセリングを行ったり、魔法テストを行ったり。しかし、残念ながらそのカウンセリングを受けなかった人が居ればその人が魔獣を生み出す存在になってしまいます。そんな存在が現れた場合、異世界から女神の力を持つ少女を呼び出すことになっています」
「どうして異世界なんです?元々のこの世界にはそのような人は現れないんですか?」
「はい、残念ながら。異世界から来た少女には魔獣を全て討伐出来るくらいの魔法能力があります。その方に魔獣が現れると討伐をお願いしているのです。もちろん魔法の特訓をしてからですよ」
そうだったんだ。
その女神様の力が無いと魔獣を討伐出来ないのかな。
大変だなー。
女神様じゃなくて良かったー。
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