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知らない世界でも人ってぐっすり眠れるものなんだなと私は感じていた。
ベッドがあまりにも寝心地が良すぎる。
アパートでは普通に布団を敷いて寝ていたし、実家でもこんな寝心地の良いベッドは無かった。
私はベッドから起き上がって外を見た。
綺麗な朝焼けが見える。
ゲームの世界のような風景に、ここが私の生まれ育った国ではない事を思い知らされる。
私は窓から離れてにゃん太郎を抱っこした。
部屋から出て長い廊下を歩く。
通り過ぎる人は私を見て頭を下げた。
私も頭を下げながら歩いて行くと、前からチェイスさんが歩いてきた。
「あ!チェイスさん!」
声をかけるとチェイスさんは話していた男の人に何か言って男の人と別れると私に微笑んだ。
「おはようございます、レイ様。昨夜はよく眠れましたか?」
「それはもう!」
「良かったです。本日はこの国を案内したかったのですが、急用が出来まして……」
「急用ですか?それは仕方ありませんね」
「本当に申し訳ございません」
最初にチェイスさんに会った時にチェイスさんは『魔法騎士団団長』って言ってた気がする。
この国には魔獣が出てて、それを討伐しないといけないんだよね?
チェイスさんの肩に乗っているサラマンダーは私に擦り寄った。
「レイ様が触れてからずっとサラマンダーが見えている状態なんです。他の人に何が居るのかは分からないのですが、この子だけはハッキリと」
「それは良かったですね!サラマンダーもチェイスさんに見えるようになって嬉しいかもしれません」
「え?」
「だって、誰にも見えないって孤独だと思うんです。せめて自分が憑いてるご主人にだけは見えててほしいって、私だったら思うから。それに、見えてる方が仲良くなれてもっと強くなるかもしれません!」
私がそう言うとチェイスさんは少し驚いてから笑った。
「相変わらず、変わった考え方をされますね」
「そうですか?」
「ええ。あ、そうだ。レイ様のお部屋にお食事をお持ちいたしますので、本日はゆっくりお食事をお取りください」
そういえばこの世界に来てから何も食べてない。
言われればお腹が空くのはどうしてだろう。
私は笑顔で頷いた。
「そうします。チェイスさんも、お仕事頑張ってください」
チェイスさんは笑顔で私に手を振ると私とは違う方向へ歩き出した。
部屋に戻るとメイドさんが私の食事を運んでくれた。
パンと紅茶、それから何かのジャムが用意されている。
私はメイドさんにお礼を言った。
メイドさんは私に頭を下げると部屋を出て行った。
さて、食べるか。
にゃん太郎の食事も用意してくれているのがとてもありがたい。
私はパンを掴んで口に入れた。
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