睡眠チケット ー 完 ー

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睡眠チケット ー 完 ー

 コーヒーカップほどの小さな発券機に「今日の12時から13時までの一時間分」と青年が言葉をなげかける。ピッと小さな電子音がして発券機が起動し、すぐさま睡眠チケットが発行された。  電車にのる乗車券と同じくらいの、長方形の白いチケット。それをひらひらと持ったまま青年は自分のデスクに戻ると。 「じゃあ、俺、昼休みの一時間寝るから」  と周りにいた同僚に宣言をした。 「はいよ」「寝るって机で? 体痛くならねえ?」「昼食はいいのかよ」  様々な反応が返ってきたが、すでに青年はチケットを口に含んでしまっているため答えることができない。  青年の唾液に含まれているDNAとチケット内部に保存されているDNA情報とが反応し、間違いなく本人であることが証明される。そして精神状態から自ら望んで発行したものであることがわかると、即座にチケットは液薬となって青年に眠気を与えた。  青年はトロンとした目で机に突っ伏し、あくびを噛み殺しながら一言、「おやすみ」といって、12時ちょうどに眠りに落ちていった。
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