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夕闇に染まる1本の道を1人の少女が歩く
まだ幼さの残る彼女は誰かを探すでもなく、ただ、前だけを見据えゆっくりと歩く
次第に日は落ち、辺りは街灯が仄暗く照らすだけ
それでも少女は歩き続けた
何処に行くのかと、尋ねる声に答える事もせず
そんな少女の後ろ姿に酷く惹かれた私は何も言わずに後を追った
近寄りすぎず、離れすぎない距離を保ち歩く事数分
ふと彼女は立ち止まり振り返る
私はハッとして身を隠そうと辺りを見回したがどうも都合良いものが見つからない
そうこうしていると彼女は私に向かって1歩近づき、こう囁く
「何が目的?」
今にも消えそうな程に力なく発せられた言葉にはなんの感情も感じられなかった
私は何とか笑顔を作り、言葉を返す
「こんな時間に君のような子供が何処に行くのかと思ってさ。」
すると彼女は興味無さげに首を振りくるりと踵を返す
そして一言だけ残しまた歩き出した
「行く宛てなんて何処にもないわ。」
自分の事なのに何処までも無感情に言ってのける彼女に私の興味は更に駆り立てられた
着いてくるなとも言わずただ歩く彼女の後を私もただついて行く
不思議な時間だった
そして月が真上に登った頃、彼女は再び口を開く
「何故着いてくるの。」
今度は此方を見ようともせず空に放たれた言葉に私は顔が綻ぶのがわかった
「君に興味があるから。」
それだけ言えば私も口を閉ざす
すると彼女は酷く悲しそうに顔を歪ませて私の方を見た
「"この子"にそんな事言わないで。期待させないで、期待しないで。」
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