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episode1/夜の少女
あの不思議な出会いから数日
私は毎日同じ時間に同じ場所で彼女を探した
彼女は毎日同じ様にただ前だけを見て歩き、そして空が白み始める前に何処かへ帰っていく
帰り際には決まって
「着いてこないで。」
と言い残すので、私の夜もそこで終わりを迎える
お陰で毎日寝不足だが、そんな些細な事が気にならなくなる程私は彼女に興味があるのだ
行く宛もなくただ闇夜を彷徨う少女
何処から来て何処に帰るのか
何故家で寝ないのか
友人に話した時にはただの放置子だろうと一蹴されたが、それにしては彼女の身なりは整っていた
それにあの"無感情"だ
恐らく中学生か、又はまだ小学生なのかもしれないと思う程幼い顔立ちの少女からは想像も出来ない程彼女には"何も無い"
他人に対しても自分に対しても、何が起ころうとも"どうでもいい"とさえ思えるのだ
そんな事が有り得るのか?
どんな生き方をすればあれ程幼い少女が"そう"なるのか
私は知りたくて仕方がなかった
と言うのも、今までの人生で自分程に不幸な人間はそう居ないと思ってきた節があるからだ
周りの人間の悩みなんて私からしたら些細な我儘だと思っていたのに、突如目の前に現れた少女は見た事も無い様な空っぽの器だったのだ
それが羨ましかったのかもしれない
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