桜ノ夢

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 時は平安時代。優美で美しい文化と仄暗い影が存在していた貴族の時代。  貴族は遊びや政治に戯れ、美しい箱にはで暮らしていた。  さてさて、そんな時代でも夜というのは恐ろしいものであった。それ故、夜の帳が下りることには箱庭の中で暮らす貴族たちは、度胸試しや愛しい女と会うとき以外は外に出ようとしなかった。  今の時代でも、狐に化かされる、狸に化かされる、悪いことをすると鬼が来る。なんて話はいまだに残っている。  だが、平安の闇はそんな生易しいものではないのだ。  百鬼夜行、幽霊、呪い、妖、鬼、時に命の危険をもたらすものたちがさ迷い歩いていることもある。例外として見逃してもらえることもあるが、例外は特別な理由があるから例外になるのであって普通は見逃してもらえない。それが、京の都の帝でも、屈強で腕ふしが強い男だったとしても。  とは言え、それから身を守る、否、守ってくれる存在はある。僧侶や陰陽師たちだ。  陰陽師は今でいう公務員でもあるので普通、陰陽寮にいるのだがそうではないものもいる。
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