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「誰だっていいじゃない、あなたに訊かれる筋合いなんかないわ!あの子は、梨絵ちゃんはまだ十五歳だったのよ?かわいそうに、まだ楽しいことがたくさん、たくさん待っていたはずでしょう?ぶち壊しておいて、よくぬけぬけと!」
激昂する女性の肩越しに、遺族側の席をちらりと見ると、黒無地に五つ紋の着物姿の女性が折り畳み式のパイプ椅子に座ってがっくりと、肩を落としている。
その隣には背が高い、やせた学生服の少年が座り、丸まった背中をなでたり、耳元でなにかを囁いたりしていた。
「どこを見ているの、早く消えてちょうだい!」
女性の叫びにはっとしたらしく、少年が顔をあげる。
その拍子に、目が合った。
少年の目はぎりぎりと目じりがつりあがり、怒りに満ちていて、今にも怒鳴りつけている女性を加勢しそうにも思えた。
改めて、朋子はもちろんだが、私を含め家族が「この場にふさわしい人間ではない」だけでなく、むしろ「敬遠されるべき人間である」という事実が襲い掛かってくる。
「申し訳ないって思うなら、今すぐ出ていって!姉さんも誠一郎くんも、梨絵ちゃんを喪って、どれほど辛いか……」
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