出来損ないヒーロー#20 終

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でもそんなのどうでもよかった。 今だけは自分たちの世界でいたかった。 どうして離れなきゃならないのか、なんて宇佐美の方が沢山思った。 だってそれは、真宏と付き合う前から分かっていた事だった。だから宇佐美は真宏と付き合う訳にはいかなかった。 けれど、どうしたって真宏を好きになってしまった。 真宏を好きで、好きで、たまらなくなってしまった。 だから付き合ってしまった。 そしたらもっと好きになってしまった。 そしたら離れたくなくなってしまった。 けど、神様なんていないのだ。 結局宇佐美は、真宏と離れる。 泣き叫ぶ真宏の肩に顔を埋めて、宇佐美は涙を押し殺した。 ─……真宏、俺はお前をずっと愛すよ。 言ってはいけないその言葉を、吐き出した息とともに心で呟いた。 真宏は、呼吸を落ち着かせてから、宇佐美の両頬をいつものようにあたたかく包む。 涙を拭うこともせず、流し続ける。 「これだけは絶対に覚えておいてください」 「生き続けること。何があっても絶対に」 「俺はずっと貴方を信じています。これだけは何があっても忘れないでください」 涙を零しながらも、しっかりと宇佐美の瞳を見つめ、真宏は伝えた。 宇佐美も苦しそうに微笑んで「分かった」と頷く。 こんな顔を見るのもお互い最後なのだ。 目に焼き付けて、目を瞑ったらすぐに思い出せるくらいに。 「宇佐美」 「うん」 「大好きだよ」 「……っうん」 「ずっとずっと、大好きだよ」 「っ、うん」 「この世で一番愛してます」 「俺も愛しとる……っ」 「大好きだよ」 「俺もや」 「……へへ。最後は、笑顔にしましょっか」 「はは。せやな」 「ばいばい、うさ先輩」 「……元気でな、伊縫」 最後に、どちらからともなく顔を寄せ合いキスをして、どちらからとも無く距離を離す。 もう何も、思い残すことがないとでも言いたげに背を伸ばして、今度こそ1度も振り返らず宇佐美は真宏の前から去って行った。 見えなくなった宇佐美の後ろ姿をいつまでも見つめ、真宏は呟いた。 「さよなら先輩。俺はずっと貴方のものです」 陽の光に当てられてキラリと光るピアスを指先で弄びながら、空へ向かって微笑んだ。 END.
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