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口十不
「おやすみ」
虚しく響いて消えてくことば。
もう、届いていないのかもしれない。
さいごに“おやすみ”が返ってきたのはいつだっただろう。
次の日“おはよう”と交したのはいつだっただろう。
優しく微笑んだ、眠ったままの彼女。
もう、何年になるだろう。
突然、そう、なってしまった。
会えるのに、逢えない。
…………………なんで、彼女が。
彼女がいなければ、意味ないのに。
神様なんて、本当にいるのだろうか。
本当に、私達を見守ってくれているのだろうか。
真っ白な、眩しすぎる部屋。
神々しいような。
もう、なにもないような。
もう、なにもいないような。
天を仰ぐ。
俺はきっと、しかめっ面をしているに違いない。
そこに神様がいるのか、彼女がいるのか。
誰にもわからないけれど。
どうして彼女なんですか。
どうして俺を置いて行ってしまったんだよ。
「ゴホッ、ゴホッ、っ」
あぁ、ほんとに嫌になる。
君がいなきゃ、
君といなきゃ、
真っ白な彼岸花。
やっと手に入れたのに。
いつになったら真っ白な百合になるのか。
苦しいんだよ、
でも、俺を助けられるのは彼女だけだから。
俺はいつまで待とう。
彼女を助けられるのもまた、俺だけだから。
また、「おやすみ」のあとに「おはよう」が聴けるように。
…今日もまた、彼女のために生きてしまった。
きっと、明日も明後日も。
花を吐き続けるのかもしれない。
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