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『病める時も健やかなる時も、
喜びの時も、悲しみの時も、』
僕は初め、カレンが我がグループ企業会長の令嬢なんぞ、知らずにあの日出会って、
『富める時も、貧しき時も、
愛し、敬い、慰め、助け、』
そん後も事後処理で、彼女んメーカー本社に顔を出すうち、ちょっかいを出す様になった。
『 命ある限り真心を尽くす
事を汝、神に誓いますか?』
ちょっかいゆーても、やれバレンタインになりゃあ、
「カレンさん、僕にチョコレート用意してくれてますよね?せっかくなので取りに来ました~。」
とか言いつつ、明ら様に嫌悪する彼女の隣ん座って
、貰えるまで帰らんとゴネて、広報部で用意した義理チョコをくすねたり。
「ホワイトデーのお返しですよ ー!!皆さんでどーぞー!」
と、広報フロアのキッチンで爆発ポップコーンんば
大量生産すっと、彼女の机にテンコ盛りって怒鳴られるっちゅーみたいな、イベントになると現れるイタズラお祭り男で、外堀埋めていったった!!
『いかなる時も共にある
ことを永遠に、誓います。』
だから、サプライズは僕の十八番なはずやろが、、
何故こんな場所まで、カレンは来とる?
電子タバコを吸いながら運転してきたレンタカーに
凭れて、僕は目の前に立つ建物を眺める。
「知らんかった、最近キレイに工事し直してたんやな、、」
関門海峡に面した九州は観光地の1つとしても有名な、この場所。
海沿いに歴史建造物なんかあって、レトロな港町だ。
早朝の港駅。
すぐ海があるから潮の香りと、船の汽笛が遠ーーくに聞こえて、、現実味がない。
アニメ映画のモデルと有名になったモダンレトロな駅舎が、目の前の建物。
僕には、妻と挙げた結婚式場の由緒ある建物をどっか思い出させて、電子タバコが男目に、しょっぱい、、
僕ん記憶より、ずっとキレイになっとる此の場所が、僕の妻カレンが事故ゆーか、どっちかといえば事件にあった場所になる。
ほんの数時間前ーーーー
僕は電話で告げられた場所に駆けっつける為、取るもん取って高速ハイヤーを空港に走らせた!
最終便で、南にすっ飛ばんがために。
「すいません!!入院患者の夫です。面会の了解はとってます。部屋を教えてください!!」
飛んだ先の空港から、よー出来るマンションコンシェルジュが、予約してくれたレンタカーで30分。
日付は回ったけど夜中にその病院にはつけた!
そっから案内してもらった病室を開けると、目の前に眠る僕の妻カレンは、酸素?マスクに、たくさんのチューブやらなんやらに繋がれとる。
それが普通の量やない。
「義兄さん、あの、カレンさんは一体どういう状況ですか?」
ベッドん前ん椅子に、幽鬼みたいな顔で座っとる義兄へと、勢いよく歩いて僕は問い掛ける。
「アマネ、、来たか。とりあえず順番に話す。ああ、親父達は、今さっき説明した。今後の準備を手配に一旦、出ている。」
お堅い医者の義理長兄が、いつもは職業柄気をつけてタフなのに珍しく目の下に隈を作っていた。
それが、妙に嫌ん気持ちにさせよる。
「まずな、どうやらカレンはフェリーで門司まで来たみたいだ。どうりで、車も駅も調べて出てこないはずだ。ホントに。」
「フェリー?」
頭を両手で抱えてガシャガシャ髪を乱暴に掻く。
義兄に僕は気の抜けた声で 呟いた。
「理由はわからない。とにかくフェリーの乗船券があった。問題は、降りてからどこかのタイミングでひったくりにあって、財布の入ったカバンを捕られた時に転倒したんだ。この救急センターに搬送されてICUに入ってる。」
「ひったくり、、だから身元が全然わからないことに、、」
頭にまだネットもしている、妻の姿を目に捉えながら僕はその後の言葉を待つ。
深夜のセンターは、時折、救急車のけたたましい音が響いて、一瞬、カレンもこんな風に運ばれたんか?と考えて、胸が冷たくて痛い。
「身元を確認出来る物がないまま意識不明のカレンは検査で、転倒による頭部打撲、 と予想される、くも膜下出血を起こしていたと説明された。」
義兄は両手肘を膝において、うずくまる様になると
苦し気な呼吸を吐いて、
「一部脳機能停止。いわゆる脳死の状態だ。」
僕はそん言葉を聞いて、両目をめいいっぱいに開いた。
もちろんカレンの宣告に、頭から滝を打たれたみたいな衝撃を受けたのもある。
それに加えて、僕が目を見張ったのは、、
僕に宣告して震える義兄の向こうに、
後ろ姿の妻カレンが座って、いる。
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