爽やかな春風とともに

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 お弁当を届けて早く帰ろうと思っていたことも忘れていた。  バラバラのジャージを着ているのは、私と同じ新一年生っぽい。背も低いし、先輩たちの声に、いちいちビクビクしているようだ。別に先輩だって怒っているわけじゃないと思うんだけど、緊張しているから、そう聞こえる。 「いいなあ」  誰もいないのをいいことに、ぼそりとつぶやいた。  私もユニフォームを着て、ボールを蹴って走り回りたい。なんでこの学校、女子サッカー部はないんだろ。  ううん、この学校だけじゃない。サッカーが盛んな県なのに、女子サッカー部があるのは私立の学校だけ。  当然私の頭じゃ一般入試は無理だし、スカウトされるような実力はない。    あ、下手ではないけれどね、決して。  小学校で入っていた少年団が、「サッカーをやりたい人なら、誰でも」って感じで、勝ち負けよりも楽しむことをメインにしていて、大会に出ても上位になることは難しかったから。  もちろん、勝てば嬉しかったし、監督も褒めてくれた。私がサッカーを好きになったのは、少年団のおかげだ。あと、お兄ちゃん。  クラブチームに入るのも、ちょっと気が引けた。まぁセレクションに万が一受かったとしても、家から遠すぎて、練習に行くのに苦労していただろうけど。
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