Iと蛇 #1

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口の中も切ったらしく、血の味がする。頭も痛い。抵抗する度に殴られ、律は『あの出来事』がフラッシュバックしてしまう。 ……やばい、ここでパニックになったらやばい……やばいやばいやばい…… 「顔上げろ」 ついに下着を脱がされ、ワイシャツの前を思い切り破かれる。 ボタンが弾け飛び、からんころ、と音を立てていった。もう抵抗してはいけないと悟った律は大人しく、力を抜く事にした。 ……どう抵抗しても無駄だ。 俺は『また』、人形になるしかナインダナ。 「う゛ぅ゛……っ」 パンッパンッと激しく肌と肌のぶつかり合う音がする。あまりの痛みに律は叫びそうになるが、下唇を噛んで耐えていた。 声を出すと殴られてしまう。散々弄ばれた身体は、徐々に熱を持ち始め信じたくはないがコイツらの手に翻弄され始めている。後孔に無理矢理捩じ込まれ、嫌でもソイツの形になってしまう。ずっと、ずっと激痛で吐き気が止まらない。流したくもない血と涙が、無意識に流れてしまう。 「なぁ、中々イイ顔してんじゃん」 「……んぅ……ッ」 ぴちゃぴちゃと水音が鮮明に聞こえ耳までも犯される。ゾクゾクと駆け上がるこの感覚が、嫌で嫌で仕方が無い。 腰が疼いてしまうのも、憎たらしい。けれど、苦痛を越えた後の快感にはどう足掻いても抗えず、段々と声を漏らすようになっていった。こんなものは快楽とは呼ばない。暴力以外の何物でもない。男のモノがゆっくりと律の腸壁を擦りあげる度に、腰がびくりと大袈裟に反応する。 「ぁ……あん……っ」 「ココも触ってやんねーとなぁ」 「んぁ……!ぁ、や……ッ」 痛いほど強く胸を触られたかと思えば、二つの小さな粒を好き勝手にくにくにと弄られ、思わず喘いでしまう。 そのうち、もう一人の男に自身の中心の浅ましく醜い欲望をくちりと扱かれ頭がボーッとした。人間にとって敏感な三箇所を一気に攻められ、律は開口しきってしまう。 「おい、涎垂れてんぞ。そんなに気持ちいいのか、男に掘られて」 「ひぁああッ!」 ぐ、と最奥を突かれ、びくびくと身体が痙攣し思わず白濁を吐き出してしまった。 「何勝手にイッてんだよ、テメェ」 「ぁ、あぁ、ま、まって……イッたばっか、やぁ. ……ッ!」 吐き出したばかりで敏感なモノを、男に無理矢理扱かれる。先程からナカを突いている男の腰は止まらず、前立腺への刺激も止まらない。敏感な自身を弄られ、律は快感が苦しくてぎゅうっと後ろを締め付けてしまう。 「くっ……締めすぎだろ、お前ッ」 「おい、動画撮っとこうぜ。勝手に射精した罰」 「おー、いーな。おめーの携帯で撮れよ」 ぬちゅぬちゅと水音が激しくなり、律は目を見開いて携帯を構える男に手を伸ばす。 「ぅあ、ま、まって、やだ、ぃや……ッ!!で、でちゃ、おしっこ、おしっこでちゃう……ッ」 男はニヤニヤしながら、「おー、お漏らし宮村くんでちゅか〜?」などと言っていたが、もう律の耳にはそんな言葉は届かず、尿道を上がってくる恐ろしい程の何かが与えてくる快感に喘ぎが止まらなかった。 「あ、あぁああぁ……ッ!」 びくびくっと大きく痙攣しながら、律はぷしっぷしっと大量の水を吐き出した。 「うわ、おいこれ潮じゃね?」 「は、嘘だろ。男も潮とかふけんのかよ、ウケる」 「う、イク……ッ」 「ぁ、あぁ……ッ!!」 ずぷり、と深く突かれ、再び身体が痙攣した。じわぁ、と熱い感覚をお腹の中に感じる。ゆっくりと、引き抜かれ質量を無くした下腹部は途端に寂しくなり、後孔はくぱくぱと無意識に開閉していた。 「うわぁ……えっろ」 とろり、と後孔から垂れる男の精液も動画に撮られていたが律は、身体が痛くて身動きが取れずボーッと寝転がりそのまま意識を失ってしまった。 「またね、宮村くん」 そんな下卑た笑い声を纏う男たちの声はもう、聞こえていなかった。 「……いッ゛……」 次に目を開けた時、男達は居なかった。代わりに、カピカピになった下半身と軋む身体、悲鳴をあげている腰。 夢では無かったと、思い知らされる。とにかく帰らなければ。今が何時かは分からない。 ただ、まだここに居ることが気づかれてないということはそう遅い時間では無いのだろうと決めつけ脱ぎ捨てられた下着と制服を着直して、ずるずると重い体を引きずって教室を出た誰にも会いたくなくてさっさと学校を出た。 あまり人通りのない道を選び、家に着く。靴を脱いで、急いで風呂に飛び込んだ。頭から冷水を被り、必死に体を擦った。 消えない、消えない、消えない─……男達の感触、声、消えない。プラスされる、記憶。重なる男たち。 フラッシュバックが、止(や)まない。 消えない過去として蓄積していく現実が、酷く重い。 『嫌だ』 「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ!」
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