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ダンッとシャンプーのボトルを壁に投げつけ、泣いた。呼吸が乱れる、構わない、死ぬかもしれない、構わない、寧ろ、
……死んでしまいたい。
誰も助けてくれなかった。誰も。一人だった、誰も居なかった。
いつも一人、あの時も今回も、……これからも、独りなのだろう。分かっている、期待なんてしちゃいけない。すればするだけ自分が惨めになる。
『嫌だ』
頭に響く自分の声ですら、今の自分を否定しているように思えてならない。ゴシゴシとタオルで擦りすぎて、皮膚がめくれてしまった。それでもいい、構わない。
嫌なんだ。見知らぬ男から与えられたのは、苦痛の筈なのに、自分は、感じてしまっていた。
……快感を、感じ、あろう事か、「もっと」と思ってしまった。嫌だ、嫌だ、醜い、自分は醜い。
もっと、血が流れればいい。流れた血液から、同時に醜い己の細胞も流れていけばいい。
いつの間にか手に持っていた剃刀と、流血している腕。シャワーの水が血を洗い流し、排水溝へと導いていった。
棄(す)てられる己の一部を視覚化された事により安心感を覚えた。落ち着いてきたところで胃が痛いことに気が付いた。
キリキリと軋む胃を抑えつつ、暫く冷たいシャワーを浴び続けた。
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