3人が本棚に入れています
本棚に追加
――どれくらい眠っていたのかしら。
心做しか、ガタンゴトンという音と一緒に身体が揺れている気がする……
まだ眠気の取れていない目蓋を、ゆっくり開けると……まず最初に視界に写ったのは、竜胆色の女袴。そしてその上には、玉のように白い若い娘の掌が力なく置かれていた。
勿論、私のものである筈がない。だけど、あまりにも自分の物であるかのように置かれているものだから、試しに動かしたくなってみた。
身体に力を入れてみれば、視界に写っているその掌は……
動いた。
え、なに、これ。
この掌が、私のものだというの?
ぼんやりしていた意識が一気に覚醒した私は、俯かせていた顔を上げた。
「あれ、目が覚めてたんだね。おはよう」
ピタリと、石のように固まって凝視してしまった。
「どうしたの、そんなにジロジロ見て。俺の顔に何か付いてる?」
「あ……ごめん、なさい……」
「ちょっと、何で敬語なの」
可笑しそうに笑う少年の、なんと可愛らしくて……懐かしいことか。
さっきまで思い出せなかった彼の人が、其処に居た。
最初のコメントを投稿しよう!