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…お父さん…
あ!桜井さんの息子くんか!
そう言えば名前、冬馬くんとかいった筈。
ん?トウマ様って、この子の事?
「そうだな。陽菜ちゃんちょっと、こっちに一緒に来て」
「あ…はい」
桜井さんが辺りを気にしながら人気の無い場所に移動。
この状況、ここで何か説明してくれる?
と思ったら
「今なんで陽菜ちゃんが男なのかの説明をしたいんだけど、外で出来る話じゃないから、これから瞬間移動で俺の家の書斎まで飛ぶから」
と言い出した。
…は?
「瞬間移動っ!?」
「そう。ごめんね、そこもちゃんと説明するのはあれだから、直ぐ移動しよう。ちょっと腕掴ませてもらうよ。
冬馬」
「うん」
そう言って桜井さんが私の腕を掴んだ。次の瞬間には、私も桜井さんも冬馬くんも、本が沢山有る応接間の様な場所に居た。
「あ、お父さん、土足w」
「あ〜…まぁいいやww」
なんて、この有り得ない状況をさも当たり前そうな呑気な様子の親子を見て、1つの結論に思い至った。
そうか!これは今までと同じ世界な様に見せ掛けて、魔法が存在するパラレルワールド!
「分かった!これ流行りの、死んだと思ったら異世界転生してたってやつですねっ!
異世界と言うか、今までの世界と類似してるけど、魔法とかが存在するパラレルワールド的なやつ!って事だ!」
「えwww」
「そうだなwwそう思うのも無理は無いw」
あれ…違う?
2人に笑われてしまった。
「あ、話する前にちょっと待ってね。一箇所電話する所が有るから」
しかも桜井さんにしれっと流された。
なんか……恥ずかしい事言ったかも…
勝手に1人羞恥プレイと化してたものの、スマホで電話をかけ始めた桜井さんを横目に、冬馬くんにソファーに座るように促されて取り敢えず座る。
桜井さんは父に電話をしたようだった。
暫しそちらに耳を傾ける。
「あ、稲城さん。
すみません、今日伺う筈だったのですが、急用が出来てしまいまして…………ええ、お願いしていたのにすみません、また次の機会に伺わせて下さい。
そう言えば“陽太くん”、清蘭に転校するって言ってましたよね?もう寮に入りましたか?
…………あ〜そうなんですね。じゃあ暫くスイーツ作りの方は教えてあげられないかなぁ………ハハハwそうですかw
……ではまた、陽太くんにも奥様にも宜しくお伝え下さい」
桜井さんは物凄く自然に父と話して通話を切った。
私の事を“陽太くん”と呼んだのに、父が疑問視する素振りも無かったように…
未だに理解が追い付いていない。
のに、更に桜井さんは誰も居ない筈の場所を見ながら誰かに声を掛けた。
「ナツ、お前稲城さんと俺が知り合いだったの知らなかったのか?」
『知らなかった。桜井が和菓子作りに通ってたのあそこか…』
すると桜井さんが視線を向けていた方向から、あの男性の声が聞こえてきた。
その言葉に更に桜井さんが返す。
「まぁ数ヶ月に1回の偶にだけどな」
『…成程…桜井や冬馬様の動向は僕じゃ分かんないんだよ…本気で想定外……そっかー…』
ふ、普通に会話してる!?
そもそもこの声何!?幽霊!?私霊感皆無なんだけど!なんで声だけ聞こえてるわけ!?
「さ…桜井さん…事故直後からなんか、男の人の声だけ聞こえるんですが…桜井さんは姿が見えて話してます?」
「うん。
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