【 小さな夏休み 】

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【 小さな夏休み 】

 年に一度、僕たちの家族は、お母さんの実家のある田舎へ泊りがけで遊びに行く。  決まって7月の上旬。  お父さんは自営でパン屋を経営しているが、この時だけはお店を『お休み』にして、家族3人でいつも2泊3日の一足早い小さな夏休みを取る。  なぜこの時期なのか。  目的は、2つ。  1つは、母方のお祖父ちゃんの命日がこの時期だということ。  そして、もう1つは、お父さんとお母さんも楽しみにしているアレを見ること。  もちろん、僕もそれを見るのがとても楽しみだった。  でも、僕には誰にも言えない、もう1つの目的がある――。 「いらっしゃーい!」  車から降りると、あの眩しい笑顔に出会った。  元気な声と僕より少し成長している体。  1年会っていないと余計にその成長を感じる。  その女性は、大きくなった胸の中に、いきなり僕を抱きしめた……。
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