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おやすみのキス
「――よく眠っているみたいだね……」
カチャリ…と微かな音だけを夜の闇に響かせ、そっと静かに部屋のドアを開けて中へ滑り込むと、ベッドですやすやと眠っている彼女の穏やかな寝顔に私は囁くように声をかける。
それにしても、なんとも微笑ましくなるような可愛らしい寝顔なのだろう……。
「それじゃ、ゆっくりとお休み……」
そして、その少女の桃色に色付いた健康そうな頬っぺたにおやすみのキスをすると、私はその部屋を後にした。
続いて、今度はそのとなりにある部屋へ、やはり音を立てないように細心の注意を払いながらドアを開けて忍び込む。
薄闇に眼を凝らせば、こちらのベッドに寝ているのはこんがりと小麦色に焼けた肌をした、一目で運動好きで活発な性格だとわかる少女だ。
「君もよくおやすみ……」
私は彼女の頬にもおやすみのキスをして、またその部屋を静かに出る。
それから、さらにまたとなりの部屋へも行くと同様に寝ている少女の頬におやすみのキスをし、そうしてこの寄宿舎にある部屋を端からすべて巡りながら、可愛らしい女生徒達の真なる心の平穏を私は祈り続けた。
この寄宿舎で暮らす女生徒達はじつに様々だ。
明るいブロンドの髪の子もいれば、赤毛の子、黒髪の子もいる。肌の色も皆違うし、ゲルマン系もラテン系もスラブ系も、さらにはアジア系だっている……各人それぞれに容姿は違うものの、誰も彼もが可愛らしく、なんとも愛おしい子供達である。
まさに神の創りし至上の芸術品……だから、私は彼女達すべての真なる安らぎを切に願わざるおえないのだ!
手間と時間をかけ、一階、二階合わせて30近くある部屋を順々に巡り、すべての女生徒達に〝おやすみのキス〟をした私はようやく帰路につくこととする。
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