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11.奪い合う楽しみ分け合う幸せ
永野ふゆは、真砂になと二人暮らしをしている。その中で休みの日は一緒に大型スーパーに行って、あれこれ話しながら食材を買うのも悪くない過ごし方だ。
「いっぱい買っちゃったね」
真砂は戦利品をマイバッグに詰め込みながら、ほくほくとして言った。
「朝市で野菜安かったし、良しとしようよ。余ったらまたカレーで消費すればいいし」
「ふゆちゃんカレー好き過ぎて、作り甲斐控えめになっちゃうよ。カレー以外でもちゃんと消費できるよう頑張るからね!」
「うん、まあ無理しない程度でいいから」
元々永野は食べ物に頓着する方では無いから、本当に何でも構わないのだ。でも真砂と暮らし始めてから、献立を楽しみにしたり、食材を選ぶ面白さを味わえるようになった。そのことを、永野はありがたく思う。
「あっ! ふゆちゃん、だめだよ!」
「へ?」
真砂は永野の手を押さえた。今まさに、買い物袋を持ち上げたところを。
「また全部自分で持とうとして!」
そう、永野は真砂の目の前にあった袋も手に取っていた。右手に二つ左手に一つ、大きなバッグを下げている。
「このくらいなら、私だけで持てるからいいよ?」
永野としては、真砂と買い物に出掛けられるだけでありがたいのだから、荷物持ちくらいは喜んで引き受けたいのだが。
「だめだめ、半分こするの!」
「でも三袋だし……じゃ、こっち持って」
「一番小さいやつじゃん! ちょっとそっち貸して! 同じくらいの重さにするから」
こういうときの真砂は引かない。永野は苦笑しながらも、こういうやりとりに癒されているのだった。
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