12.触れて、撫でて、抱き締めて

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12.触れて、撫でて、抱き締めて

「今日ってハグの日だったんだねえ」  夕食時、真砂になは言った。やけにしみじみと言い放つものだから、同居人の永野ふゆは若干訝しむ。 「それがどうしたの?」 「うん? 今日久しぶりにふゆちゃん以外とハグ、しちゃったから」 「な、なんで!?」  永野の想像以上の反応に、真砂は満足げだった。くすくす笑いながら、そのいきさつを語る。 「職場の近くでフリーハグやってたから、ついね?」 「浮気……?」 「そんなんじゃないよお。老若男女が幸せそうに抱き合ってたら、つい混じりたくなっちゃうでしょ」 「……そうかなあ」  永野は、フリーハグに参加する人々の気持ちがよく理解できない。 「ハグって、相手との一体感っていうか、心が通ってはじめて意味があるんじゃないの?」 「わあ、ふゆちゃんロマンチストだあ。でも、知らない人とでも少しは心が通うような効果はあるかも」 「……私以外と心通わせてきたんだ」  拗ねると爪先を噛む。永野の癖。その愛おしさに、やはり真砂は永野を特別に想っていると再確認した。 「……やっぱり、今度フリーハグ見つけたら、ふゆちゃんも誘うね」 「え、やだよ」 「ハグって相手次第で全然変わるんだよ? 他の人としたら、私とが一番気持ちいって思っちゃうはず」 「そうなの?」 「うん! あーあ、知らない女の子に抱かれるふゆちゃん見たいなー」 「結局肉欲じゃん!」  フリーハグなんかに自分の愛が負けないことを、真砂は確信している。
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