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15.そんな厄日もふたりで
「あぁー!!」
「ど、どうしたの!?」
突然の悲鳴に、永野ふゆは飛び上がった。声のした方へ様子を見に行くと、同居人の真砂になが、音を立てる洗濯機にもたれ込んでいた。
「乾燥し終わった洗濯物、もう一回洗っちゃった……」
「あードンマイ……ぼーっとしてボタン押したの?」
「うん……」
「まあいいよ。もう一回乾かせば」
永野は洗濯機を止めて、乾燥のボタンを押しなおした。だが、このタイミングで真砂に悪いニュースを伝えなければいけないことを思い出して、頭を抱える。
「ふゆちゃん、気を取り直してご飯にしようか……」
「それがね、にな」
永野は一瞬言葉を選んで、結局シンプルに事実を伝えることにした。
「炊飯器のスイッチ、押してなかったみたい」
「えぇ!? ご、ごめんね」
真砂は驚き、それからがっくりと肩を落とした。
「とりあえず早炊きでセットしなおしたから、すぐ炊けるとは思うけど」
「じゃあ、先にお風呂を」
そこで真砂ははっとして、浴室の戸を開けに行く。
「あー! やっぱり! 栓し忘れてる!!」
「えーっ!?」
真砂は今度こそ、その場にへたり込んでしまった。がっくりと項垂れて動けない。
「もう、今日……なんなのよお!」
「落ち着いて、にな……!」
「もうやだあ!」
行き場のない怒りに、真砂は駄々っ子のように床でじたばたする。本人にとっては悲劇であるが、その様子が何だか可愛くて、永野は頬が緩むのを隠すのに必死になった。
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