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2.あなたを最後に支えていたい
「見て、こんなに泣いても落ちないの」
ぐすん、と鼻を鳴らしながら笑う親友を見て、永野ふゆは言葉を失くした。彼女――真砂になの泣き顔を見ると、いつも途方に暮れてしまう。
「このマスカラ新製品でね。プチプラだし当たりだあ」
「にな」
「ねえふゆちゃん……慰めてよ」
「そうしたいけど、わからないんだ」
永野は再度、確認のためにゆっくりと訊ねた。
「そいつ、どこいったの」
「隣町で他の女と暮らしてるよ」
「いくら持ってったの」
「通帳に入ってた百五十万くらいかな」
「そいつの、どこがよかったの?」
「……わかんない、でも」
真砂の大きな瞳から、また涙が一粒零れた。
「すきだったんだあ……」
リアリストの永野には、その元恋人の良さがさっぱりわからない。けれど真砂が付き合うのは男だって女だって、みな彼女を頼ってやってきて、最終的に彼女の大事なものを奪って去っていった。そう考えると永野自身も「そいつら」と同類な気がして憂鬱になる。
「でも、当座のお金ないと困るでしょ」
「そうだねえ」
「ね、しばらくうちに居なよ。仕事忙しくてほとんど帰ってないから、ちょうどいいし」
「……いいの?」
「生活費は心配しないで。給料上がったんだ」
「ごめんね……ありがと、ふゆちゃん」
「……なんかうまく慰められなくて、ごめん」
「慰めより、助かっちゃった」
明るく答える真砂が不憫で、永野は申し訳なかった。けれどこのくらいしか思い付かなかったし「そいつら」との違いを見せようという意地があったのだった。
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