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6.マーマレードは貴女のものよ
「ふゆちゃん、これ、お願いしていい?」
永野ふゆが振り返ると、同居人の真砂になが、マーマレードの瓶を持って困った顔をしていた。
「開かなくなったの?」
「うん……ごめんね」
「いいよ、これくらい……えいっ」
受け取ったそれは、永野が蓋を捻ればすぐに開いた。真砂は短い歓声を上げて、ぱちぱちと手を叩く。
「すごいすごい! ふゆちゃん、力持ちだねえ」
「にな、大袈裟……」
永野は苦笑しながら瓶を真砂に渡す。けれど真砂に誉められるのはやはり嬉しくて、満更でもなさそうだ。
「でも、にな。瓶の蓋開かなくなるの、これまで独り暮らしのときはどうしてたの?」
「んー? ええとね……」
永野の何気ない問い。真砂は照れ隠しのように笑う。
「そのときの彼氏とか、彼女とかに頼んでたの」
「そ、そう……」
永野は少しだけ、質問を後悔した。元カレ元カノの話は、いくら普段が陽気な真砂でも言いにくいだろう。特に永野は真砂の元恋人たちにいい印象がないので、尚更である。
「私、誰かの助けがないと生きられないんだあ」
真砂は切なげに言った。自分の半生を省みるときの真砂の表情には、いつも自嘲が混ざっている。
「誰だって、そうだよ」
「ふゆちゃん」
「私だって、できないこと沢山ある。だから助け合って当たり前なの。それに、になはいつも私を助けてくれるから、当然、私に助けられていいんだよ!」
「……ふゆちゃんは、優しいねえ」
正直、永野は照れ臭かった。だがはっきり言わないと、心優しいこの人は受け取ってくれないので、必死だったのだ。
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