祈る  〜神様なんて〜

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神様なんていない。 雨に濡れて冷えた体、暖を取るように膝を抱えながら、そんな事を思った。 夏の夕方、急に降り出した雨粒は徐々に大きくなり雨脚を強めた。 あっという間に辺りを水浸しにし、雷鳴を轟かせている。 行く当てのない私は、クジラ公園のクジラの口の中で膝を抱えて雨が止むのを待ち続けた。 中学の授業が終わった放課後から母が仕事に行くまでの間は家に帰りたくない。 っていうか、母親がいる時間は家にいない方がいい。 母親の口癖は「お前のせいで」だった。 「お前のせいで好きなことが出来なかった」とか、「お前のせいで男に逃げられた」とか、勝手に産んでおいてそんな事を言う。 ヒステリックに怒りながら私を殴る母。 体に痣が出来てしまう。それも顔は殴らない。足の太ももとか、お腹とか、肩とか洋服で隠れるところを狙って殴られる。 だから母がいる時間は家にいない方がいい。 夜7時になれば母は店に出かける。 そうしたら帰ればいい。 もしも、神様がいるならあんな母親を消してくれるはずだ。 だから神様なんていない。 稲光が雷鳴を呼び、雨が強く降る。 夏なのに私は冷えていた。
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