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何度試してもダメだった。どうにも調子が悪い。お手上げだ。こりゃ、状況の確認が必要だ。
オレは溜息をついてデータ表示デバイスを脇に押しのけた。
「おい、オゼン! 聞いてるか?」
音声伝達装置に向かって声を張り上げる。
「おうよ、アイン。どうした?」
ぼやけた声が頭に響く。オレはモード調整しながら相棒であるオゼンに話し続けた。
「モニタが死んでる。情報収集ギミックに何かあったらしい」
「あん? マジでか。こないだ新調したばかりだろ。初期不良か?」
モードのピントが合ったらしく、ぼやけた音声がくっきりした。オゼンのヤツ、座標をかえてたんだな。
「んなわけないだろ。装置的にはNEKOと一緒だ。器を変えただけでぶっ壊れてたまるか」
「じゃぁ、なんだよ」
「それが解んねぇんだよ。下りて調べてみるしかない」
「……なんとまぁ、☆※△め!」
相棒は聞くに堪えない罵詈雑言を吐いた。
オレ等、この水の星の軌道上に陣取って、この星に住む生命体の興味深い生態をドキュメントデータとして配信している私設の配信屋だ。オレ等と同じ炭素系生命体でありながら、独自進化をはたしているこの星の生き物の営みは、なかなかに興味深く、他星系の生命体からの視聴率も高い。文明を築いている高等生物からミニマムな原生生物に至るまで多様性が素晴らしい。ここ最近の視聴トレンドは、高等生物の多様な生活スタイルである。生息地域から、生活水準など、多種多様なバラエティーに富んでいるのでこちらもネタに困らない。一昔前は、高等生物単体の生涯を追っていたが、そうそうドラマチックな展開はないので、最近は周辺に生息する生命体に「目と耳」を仕込んでデータ収集する方法が好まれる。
「下にいるパイに連絡とってくれ。機動ギミックに接続しなくちゃいけない」
「はぁ? 先日装置搭載の時にもべらぼうなチップを払ったばかりだぜ」
「文句ばっかり言うなよ。何か不具合があるのなら、今生きてる情報収集ギミックも怪しい。投資をパーにしたくはないだろう。それとも、なにか? お前が下に降りるか?」
「……うわぁ、ゾッとする。わかったよ、連絡とるよ」
「解ればいい。さっさとやってくれ」
オレは音声伝達装置をオフにした。ったく、汚れ仕事はいつもオレだ。まぁ、編集という名のデータ整理はオゼンに丸投げだから、お互い様ってとこか。
オレは監視装置から離れた。パイと連絡が取れれば、機動ギミックと同期しなくちゃならないからだ。何度もやってることとはいえ、導入は未だにドキドキする。
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