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エピローグ
彩香がクリアファイルにはさんだ用紙の束を見せた。
「部長。今、書いてるこの小説、今度の『私たちの言葉』に発表したいと思います」
洋介がタイトルに目を落とす。
『本当は好きと言いたかったくせに! 素直でないし勇気のなかった私のふたりの先輩』
彩香の目元は真っ赤だった。
洋介は、葵の言葉を心の中で再生していた。
多分これから何回も聞くことだろう。
「私の実家のそばの花火大会。一緒に行くからね」
彩香がピンクの包みを取り出した。
「予備のロッカーに隠してありました」
彩香が洋介の手にそっと包みを置いた。
「入賞おめでとう!
洋くんは本当にすごいよ 葵」
の手書きのカード。
一度も聞いたことのない呼び名。
カードの裏に薄桃色のハートのマーク。
走り書きしたのか、かなり形が歪んでいる。
彩香の涙声が聞こえた。
「渡すのが私ですみません」
終
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