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(後日談)そして終業式に……
二学期の終業式は、文芸部の年内最終日でもある。
部の打ち合わせの後、文芸部の部長の洋介は一番最後に部室を出た。洋介は周囲の様子を見ながらゆっくりと歩き出す。他の部員たちが急ぎ足で次々と廊下の奥に消えていくのが見える。
副部長の彩香の姿もとっくに見えない。
洋介は少しホッとした気分になって、もう一度部室のドアを開けた。
部長の机の隅に立てかけた葵の写真。写真の前には花を挿した花瓶。
洋介は花瓶の花を替えようとして、意外なことに気がついた。
別の花が新しく挿してあった。
花瓶の下には一枚の封書。
中から一枚の便箋が出てきた。
『私がいつも見ている部長へ
どうして机の上に葵先輩の写真が飾ってあるのですか?
部長は心の中の葵先輩と毎日話をしているのではないのですか?
部長へ。
今年の最後に、どうしてもお話ししたいことがあります。
心の中にいる葵先輩ときちんと向き合ってください。
ふたりで花火を見てください。
ふたりで話をしてください。
私は部長と一緒に初詣に行きたいと思っています。ふたりで計画を相談したいと思っています。
私からそう提案があったと葵先輩に伝えて、どうするか話し合ってください。
話し合いの結果を、きっと私に教えてください。
連絡はLINEにお願いします』
洋介は彩香の手紙を机の上に広げた。
それから姿勢を正して机に向かった。
その頃、彩香は時々、スマホに目を落としながら、ゆっくりと帰り道を歩いていた。
脇にはさんだファイルには、今書いている小説の原稿があった。
タイトルは、
『私のためにきちんと相談して欲しいふたりの先輩』
彩香はそっと指先で目元を拭った。
後日談 完
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