17人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな面食いの橋さんにとって、ジェダは「身近に住んでいて、会いに行けるイケメン」らしい。
「こ、こんばんは……」
「停電したそうですね。大家さんも大変ですね。アパートを一室ずつ確認されているのでしょう?」
「そ、そうですね……。でも、そんなに大変じゃないのよ! この時期だからか、みんな遅くまで飲み歩いているみたいで、留守にしている部屋もあるから……」
「それでも寒い中大変ですよね。お疲れ様です」
橋さんは「いや〜」とか、「そんなことは……!」と言っては恥じらっている。
私もジェダが来るまで、こんな大家さんの姿を見たことが無かったので驚いた。
今ではすっかり慣れてしまったが。
「ジェダイドさんが一緒なら安心ね。雪次第だけど、なるべく早く復旧させるって、さっき連絡した電気会社の人も言っていたから……。じゃあ、私はこれで……」
「ありがとうございました。何かあればご連絡します」
「大家さんも気をつけて下さい」
橋さんはどこか名残惜しそうにしながら、隣の部屋に向かって行った。
私は扉を閉めると、傍らのジェダを振り返る。
「もう出てきたの? 髪とかちゃんと拭かないと風邪引くよ」
「一応、拭いてきたよ。停電してドライヤー使えないから、その分しっかり。それより懐中電灯は?」
「電池切れしているみたい」
私が持っていた懐中電灯をジェダに渡すと、同じようにジェダもスイッチをいじっていた。
「本当だ。替えの乾電池あったっけ?」
「どこにしまったか忘れちゃった……」
「買って来る?」
「ううん。大丈夫。今晩くらいは何とかするから」
こういう時、自分のズボラな性格が嫌になる。
普段から家の中を整理しておけば、こんな事にはならなかったのに……。
「明かりか……。それなら、良い物を持ってるよ」
「懐中電灯を持っていたの?」
「懐中電灯ではないかな……。職場の送別会でやったビンゴ大会で当てたものだけど……」
「どんな物なの?」
「部屋にあるけど見てみる?」
「うん」
「じゃあ、手を貸して。暗くて危ないから」
最初のコメントを投稿しよう!