停電したら天井を見上げて

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そんな面食いの橋さんにとって、ジェダは「身近に住んでいて、会いに行けるイケメン」らしい。 「こ、こんばんは……」 「停電したそうですね。大家さんも大変ですね。アパートを一室ずつ確認されているのでしょう?」 「そ、そうですね……。でも、そんなに大変じゃないのよ! この時期だからか、みんな遅くまで飲み歩いているみたいで、留守にしている部屋もあるから……」 「それでも寒い中大変ですよね。お疲れ様です」 橋さんは「いや〜」とか、「そんなことは……!」と言っては恥じらっている。 私もジェダが来るまで、こんな大家さんの姿を見たことが無かったので驚いた。 今ではすっかり慣れてしまったが。 「ジェダイドさんが一緒なら安心ね。雪次第だけど、なるべく早く復旧させるって、さっき連絡した電気会社の人も言っていたから……。じゃあ、私はこれで……」 「ありがとうございました。何かあればご連絡します」 「大家さんも気をつけて下さい」 橋さんはどこか名残惜しそうにしながら、隣の部屋に向かって行った。 私は扉を閉めると、傍らのジェダを振り返る。 「もう出てきたの? 髪とかちゃんと拭かないと風邪引くよ」 「一応、拭いてきたよ。停電してドライヤー使えないから、その分しっかり。それより懐中電灯は?」 「電池切れしているみたい」 私が持っていた懐中電灯をジェダに渡すと、同じようにジェダもスイッチをいじっていた。 「本当だ。替えの乾電池あったっけ?」 「どこにしまったか忘れちゃった……」 「買って来る?」 「ううん。大丈夫。今晩くらいは何とかするから」 こういう時、自分のズボラな性格が嫌になる。 普段から家の中を整理しておけば、こんな事にはならなかったのに……。 「明かりか……。それなら、良い物を持ってるよ」 「懐中電灯を持っていたの?」 「懐中電灯ではないかな……。職場の送別会でやったビンゴ大会で当てたものだけど……」 「どんな物なの?」 「部屋にあるけど見てみる?」 「うん」 「じゃあ、手を貸して。暗くて危ないから」
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