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私が手を差し出すと、ジェダはその手を掴んでゆっくり歩き出す。
いつの間にいなくなったのか、エアコンの上にいた小雪は消えて、光源が何も無くなったリビングはどこか恐ろしささえ感じた。
私は気になった事を尋ねる。
「ところで、ジェダは室内が見えるの?」
「夜目が効くから見えるよ。コトは?」
「私は全然……」
言われてみれば、さっきからジェダは手を付かなくても器用に家具を避けていた。
何も見えない私は、ただジェダの手を握り返して、腕にしがみつく事しか出来なかった。
ジェダの部屋に入ると、手を離したジェダが荷物を入れている段ボールの中を漁り出す。
「あった。これこれ」
「使い方は分かるの?」
「前に一度だけ、使った事があるからね」
ジェダは小さなドーム型の機械を取り出すと操作した。
スイッチを入れると、ドーム中央部に取り付けられたレンズが光り、真っ暗な天井に映像が映し出された。
それと同時に、どこかで聴いた事があるような、軽快な音楽が流れ出したのだった。
「……ねぇ。これってもしかして……子供向けのホームシアター?」
私達の頭上では、軽快なオルゴールと共に子供たちに人気のキャラクターが動いていたのだった。
「知っていたんだ。俺は始めて見た時驚いたんだけど」
子供に人気の曲に合わせて、天井に映し出されたキャラクターや動物達が右から左に流れていく。
「ビンゴ大会にしては、珍しい景品だったね……」
「景品はみんなで持ち寄ったんだ。これを持って来た人は、最近子供が生まれた人でね。同じものを親戚から貰ったから持ってきたって話してて」
すると、不意にジェダが声を上げて笑い出す。
「ねぇ、覚えてる?」
「覚えてるって?」
「初めて二人でプラネタリウムに行った時の事」
「覚えてるよ。暗くなった途端、ジェダが急に大声を上げて立ち上がるから、私までびっくりしちゃった」
あれはジェダがこの世界に来てすぐの頃だった。
近所の天文台にあるプラネタリウムが新しくなったと聞いて、ジェダを誘って行った事があった。
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