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「ジブリで一番好きなの何?」 「……風立ちぬ」 「渋いな!ねえ、メイとサツキって二人とも五月生まれなのかな?」 「……そうなんじゃない」 「ジブリおもしろ!あ、春原先生の下の名前知ってる?」 「えっと、太一だっけ……」 「そう!俺と同じ名前なの~」  自分がなじんでいく。 「あ、これ知ってる?“タカシ君は気持ちを尋ねられ「悲しい」と答えました。しかし、本当は悲しくはないのだそうです。一体どういうこと?”」 「悲しくなかったんじゃない?」 「も~ちゃんと考えてよ!結構いい問題だから考えて!時田君なら絶対分るから!」  そうか、寺島は頭使うタイプのクイズを深夜にさらっと出してくるのか。そうかそうか、そうなんだ。  それなら僕は考える。  考える。考える。考える。  ゴロゴロしながら考える。  天井を見つめて考える。  寺島が何か言ったような気がしたが、考える。  考える。  考える。  考えて、考えて、考えて、考えて……。 「あ!わかった!」  体を素早く百八十度回転させる。  目がバッチリ……合わない。 「ねえ、寺島、もう寝た?」  一定のリズムで膨らみへこむ寺島の背中を見つめる僕の顔はおそらく菩薩。  回り回って穏やかだ。  問題の答えは一瞬でどこかに流れていき、その代わりバッチリ目は冴えた。  睡魔さんはもう僕のもとには来てくれない、そんな気がする。    寺島越しの薄いカーテンの向こう側が白く光り始めている。  朝ご飯、選べるならごはんにしよう。あと、自主学習の時間は物理をやろう。  念のためセットしておいた備え付けのアラームが鳴る。  音につられ百八十度回転する寺島。  バッチリ目が合った。 「ねえ、もう起きる?」
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