おやすみ中毒者

　それから、ジローの毎日はちょっとだけ変わった。スマートフォンでお決まりのものばかり見ていたのが、色んなものに目を留めるようになったのだ。
　不格好な形に切られた街路樹のイチョウ、私服姿の男女が続々と出社していくガラス張りのオフィスビル。昼の空にはうねった帯状の雲が浮かんでいて、夜空にはまぶしい半月が現れる。ありふれているはずの風景が新鮮に感じられた。

　そんな小さな発見が増えてくると、夢の方もだんだんとリアルさが増してきて、ぐっと面白くなった。気分が変わったからか、登場人物も文句を言わなくなってきた。２週間もすると、ジローは夜寝るのが楽しみで楽しみで仕方がなくなっていた。
　ジローはスマートフォンを見る。男は中毒だと言うが、より楽しい夢のためにはネット上の情報も大切だろう。

（次はアクション系の夢もいいな）

　もちろん、生の情報をしっかり集めることも大切だ。