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その翌々日、あのホームドアの男はとある河川敷にいた。近くを通る車の音がたびたび聞こえる。
一体どうやったのか、その手にはジローに渡したはずの石が握られていた。
「ヤクザにちょっかいでもかけたのか? それとも、橋の上から飛び込んで失敗したのかね?」
灰色の不思議な石をもてあそびながら、男が言った。薄笑いだった。
「やっぱり、中毒者は損だな」
足元には一人の人物が横たわっていた。夢にとりつかれた憐れなその人物、ジローはもう目覚めることはない。今回男は何もしていない。彼自身が招いた結果だった。
男は立ち去ろうとして、一度だけ変わり果てた姿のジローを振り返った。冷ややかに一言。
「おやすみ」
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