演出

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 アイデアはあるにはある。だがつじつまを合わせ、魅力的な構成にし、読者の意識を揺さぶる演出をかますことができていなかった。    蒸し暑く、汗がダラダラ流れる中、私は腕を組んで歩いた。  浮かんでくるセリフやシーンをすくい取ることに夢中になっていたら、重たい雫が頬に当たった。 「あ」と声を出す間に、雫は雨となり降り注ぐ。  すごい勢いで、雨量が増す。 「聞いてないぞー」    小さく叫びながら、私は雨宿りができる建物を探した。    私が駆け込んだのは、小さな映画館だった。  リバイバル上映やマイナーな映画を上映しているところで、以前から気になっていたが、入ったのは初めてだ。    上映スケジュールを見ると、なかなか面白うそうなタイトルの作品が十分後に始まるところだった。    ちょうどいい。雨宿りついでに観ていこう。  いきづまったときは、他人の作品に触発されてみるのも良いことだ。    少し雨の気配を引きずっている客席に座ると、まもなくその映画は始まった。  
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