事の顛末

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事の顛末

「申し訳ありませんでした!」 白衣を着た男性が頭を下げると同時に、カメラのフラッシュが幾重にも放たれる。開発中のロボットサービスによって、人命が失われてしまったことについて、謝罪会見を開いていた。 「今回の件、我々どもが想定していなかった不具合により、起こってしまった結果です。この責任は私にあります。プロジェクトは直ちに中止し、この件に関する全ての法的な刑罰に処する所存であります。つきましては……」 責任者が言うには、男が不眠で悩んでいる事と同時に、ロボットの方もそれをうまく解消できないジレンマを抱えていた。それによって条件分岐のプログラムに不具合が生じ、『眠らせる』事に特化した行動を取ってしまい、引き換えに『目覚めさせる』条件の優先度を下げてしまったというのが事の顛末だった。 ロボットには、酸素量の調律機能が付いていた。 この機能に不備が生じ、一酸化炭素が発生し、その中毒によって被害者男性は苦しまずに死に至ったという。 おやすみロボットプロジェクトは凍結となり、責任者は業務上過失致死に問われた。不眠に悩んでいる方々は多かったようで、クラウドファンディングには結構な資金が集まっていたというから、残念でならない。 被害者男性はロボットに付属していたスマートウォッチをしており、その心拍が止まったことで、通報機能が動作したために発見された。 最初に駆けつけた救急隊員はこう証言している。 「彼は安らかに眠るように、穏やかな顔で息を引き取っていました。  最初はぐっすり眠っているのだと、私が思ってしまったほどに」
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