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光の剣
私は遙かな天上からあの御方を見詰めている。
空のように蒼い目をしたあの御方を。
私はあの御方が地上の方々を歩まれるのを見詰めている。
幾多の仲間達と共に。
気高く美しき心を持ち、世を去った幾多の仲間達と共に。
あの御方は、その果て無き旅路の途上にて出会うのだ。
どうしようもなく心を痛めてしまった哀れな者達に。
過去に負った心の傷の為に、本来歩むべき生を見失ってしまった哀れな者達に。
そんな時、あの御方はその右手を掲げる。
そして、その右手の腕輪を煌めかせながら、こう叫ぶ。
『降り注げ、光の剣!』
その叫びに、その腕輪の煌めきに応じるかのように、私は仲間達と共に地上へと舞い降りる。
地上へと舞い降りる私達は、光の剣の姿を為している。
光の剣の姿となり、地上へと舞い降りた私達は、その者と重なり合う。
そして、その者に私達の魂の熱を伝えるのだ。
私達が伝えた魂の熱は、その者に幸せな夢を見させる。
その心の傷を癒やす幸せな夢を。
その者の哀しき過去を塗り替える幸せな夢を。
一刻であれど、私達はその者の家族となる。
一刻であれど、私達は魂の全てを傾け、その者を愛する。
一刻であれど、私達はその者の家族として、その者の心を暖める。
そして、その者の心から打ち払うのだ。
その者を苛んで止まない憤怒や絶望を。
その者を蝕んで止まない悲嘆や苦悩を。
そして、その者の心を支える力を与えるのだ。
私は見守り続ける、あの蒼き瞳の御方の果て無き旅路を。
蒼空の彼方にて、私の新たなる家族と共に。
そして、蒼き瞳の御方の呼び掛けと共に地上へと舞い降りる。
金色の輝きを纏った光の剣となって。
光の剣、それは、あの御方が私に与えて下さった新たな姿。
光の剣、それは、あの御方が私に与えて下さった新たな名。
[完]
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