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砂塵混じりの熱風が吹き抜ける。
私は目が覚めたかのように気付く。
私は、あの岩の前に跪いていた。
足下には短刀が転がっていた。
旅人の姿は何処にも無かった。
街道の果てに幾ら目を凝らそうとも、人影など、もう何処にも見当たらなかった。
太陽の日射しは相も変わらず容赦が無かった。
だが、その苛むような激しさは、今の私にとって相応しいように思えた。
私は立ち上がった。
身を屈め、足下に転がる短剣を拾い上げた。
その短剣をしばし見詰めた後、砂漠の果てに投げ捨てようと思って身構えた。
けれども、それは止めた。
私は短剣をしまい込み、砂塵混じりの熱風が吹き荒ぶ中を歩み始めた。
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