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現代
代官所の中にて、私の告白を具に聞き取った代官は、声を潜めて私に告げた。
貴方が嘗て為したこと、そして貴方の気持ち、それらは良く分かった。
けれども、貴方はこの街に十二分なまでに貢献している。
多くの子ども達、そして多くの商人達が貴方のお陰で救われた。
今の貴方は十分過ぎる程に反省もしている。
そもそも二十四年も前のことだ。
今更、貴方の犯した罪が事実か否かを確かめる術もない。
この話を知っているのは私、そして、この口の固い書記官だけだ。
だから、できれば何も聞かなかったことにしたい、と。
これからも、私の友人として付き合って欲しい、と。
私は代官の提案を丁重に断り、そしてこう述べた。
犯した罪は贖わねばならない。
私は罪人として、この街の人々の前で磔刑に処されなければならない。
それが、私が命を奪ってしまった者たちに為すことが出来る唯一の贖罪であるから、と。
代官は、悲しげに溜息を吐いた。
そして、力なく頷いた。
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