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「え、なんで」
こうは驚いて、自然にそうつぶやいていた。スマホには、りさからの私たち別れようというメッセージが写っている。こうはすぐにメッセージを送る。意識する前に勝手に指が動いていた。
「なんで?おれダメなところあった?直すからそんなこと言わないで!」
「ううん。こう君のせいじゃない。私がダメなの。そういう気持ちが湧かなくなっちゃったの」
それを見てこうは、もう彼女に何を言っても現状は変わらないことに気づく。
スマホを足元の方に放り出して、寝転んで腕で目を覆った。真っ暗な中に彼女との思い出と共に、大好きだった彼女の笑顔が浮かんでくる。自然と頬を冷たいものが流れていた。
どれ程経ったか分からず、彼は目を覚ました。夢だったのか。そうであって欲しい。彼はそんな強い願いを持って、スマホの画面を付けた。
……だめだ。やはりあれは現実であった。彼は寝ながら上を見つめた。少しして、静寂が立ち込める部屋に聞き慣れた音が鳴り響いた。メッセージアプリの通知音だ。彼は再びスマホを手に取った。それは、幼なじみのゆきからのメッセージだった。
「明日、修学旅行楽しみだね。2日目の自由行動同じ班だね!」
彼はとても楽しそうな彼女のメッセージを見て、何だかこの辛い気持ちを話して見たくなった。
「俺、りさに振られた」
「え、なんで?」
「よく分かんない。気持ちが湧かなくなったって」
「何かひどいよ。それって」
「いや、俺がダメだったんだと思う」
「そんなことないよ。こう、すごいりさちゃんのこと考えてたじゃん」
「うん。大好きだったから」
「そっか」
「ありがと。ゆきに話したら、少し楽になった。修学旅行楽しもうね!」
「うん!明日遅れないようにね」
「分かってる、大丈夫」
「朝、電話してあげよっか?」
「大丈夫だよ笑。おやすみ」
「おやすみ!」
こうは部屋の電気を消し、目を閉じた。何だか今は、りさのことは頭に思い浮かばず、ゆきの楽しそうな表情ばかりが出てくるのだった。
ゆきは、こうにおやすみとメッセージを打つと、部屋の明かりを消した。こうのことが心配になりながらも、彼女の心の中には嬉しいという感情が芽生えていた。ゆきはその気持ちを押し殺しながらも、明日から始まる修学旅行がより楽しみになっている自分に気づいていた。
始まる、二人の修学旅行が。
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