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車が近づいてきて、私たちの前で止まった。
「二人、早いじゃない。車はどうしたらいい?」
スマホで駐車場の位置ぐらい確認すればいいと思ったが、調べたり考えたりする前に人に聞いてしまう子だったと、思い出す。
「学校の敷地をその先ぐるっと回って校舎の裏手にあるから」
車からいったん降りて何か重そうな荷物を下ろして、再び乗り込んで走り去った。
「ミリリらしいわ。ちゃんと駐車場に入れると思う?」
「大丈夫よ。困ったら、また誰かに聞くでしょ」
実莉だからミリリ、たまたま全員が二文字の名前だったから二文字目を重ねた呼び名となった。誰が呼び始めたのかは覚えがないけれど。実莉の車が曲がっていった角から一人、走ってくるのが見えた。
「ご、め~ん。遅れた?」
ハァハァ言いながら、しゃがんだ。
「ミリリかと思ったらリママじゃない。陸上部の花型健在、でもないか。すっかり……。その辺でミリリの車とすれ違ったでしょ」
「気づかなかった」
確かに璃麻は肉が多めになっていて、速く走るのは難しく見えた。
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