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この日、寮の見学と宿泊のために入ったのは私たちだけだった。私は泊まる予定にはしていなかったが、言い出しっぺの真奈がいろいろと準備してくれていたので、断り切れず四人揃っての宿泊となった。
「あの頃より古びて、なんだか怖くない?」
「ミリリは怖がりだからね。大丈夫よ」
「お腹すいた。コンビニでなんか買ってくる?」
「食いしん坊のリママがそう言うだろうと思って、お弁当準備してきた。私が作ったんじゃなくて、ちゃんとお店で作ってもらったから味も保証する。広げるから手伝って。早く食べたいんでしょう?」
「ふぁ~い」
「久しぶりに聞いたわ。璃麻の気の入らない返事。私は飲み物を持ってきた。ワインでいい? 缶ビールも用意はあるけど。どっかにグラスないか探してくる。紙コップよりいいわよね」
実莉はそう言って部屋を出て行った。さっきまで怖がっていたのに、一人で探しに行った。私抜きで彼女たちの中で前もって分担がされていたのではないかと思えてきた。璃麻も真奈の料理に何かしら持参したものを加えているようだった。
「ごめん、私、なんにも用意してない。帰るつもりだったし。近くにコンビニができてたから、何か買ってこようか?」
「ナミミは気にしなくていいの。ほら、合わせたら結構な量。大丈夫、食べましょう」
寮だったその部屋はベッドの場所がそのままだったが、机や簡易ダンスなどはなくなっていた。昔なかったテーブルと椅子が真ん中に置いてあったが、泊まっていた時と比べると広く感じる。暖房も壊れているらしく私たちのために石油ストーブが二つ用意してあった。
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