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二
寮を出ることになった頃の私の記憶が何故か飛び飛びで、何か大切なことを忘れたままのような気がしていた。それではいけないと心のどこかで思っていたから、真奈の誘いに乗ってこんなところまで来た。寮があの頃と同じでないにしてもこの場所に来たことで、ぼんやりとしたものがクリアになるきっかけになるかもしれない……。
私の箸が止まっていたらしく、他に気をとられていることに気づいた真奈が訊いた。
「ねえ、ナミミ。覚えている? 私たちが繋がっていること」
「しりとりができること?」
「そうそう。南美、実莉、璃麻、真奈。誰から始めてもぐるり四角形」
「四角形……」
何かが引っかかる。確かにテトラだったけれど……。
「南美、全然食べてない。飲んでないし。私が食べちゃうよ」
「ああ、うん」
璃麻が私の分をとる真似をしてみんなを笑わせている。
卒業してから、四人が顔を合せるのは初めてだったけれど、揃って食事をとりながら違和感を感じるのは何故なのか。私だけが蚊帳の外にいるような感じ、夕方の四時に待ち合わせというのも聞いた時、変な気はした。最初から泊まるつもりで、三人が打ち合わせ済みだとしたら?
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