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人生の部屋?
「こちらが美潮さんの願いが叶う、人生の部屋です」
どんなお布団天国かと期待して目を開けたら、無数のエスカレーターが横一列に並んでいる空間だった。
自分もどんどん進んでいってしまうから、別のエスカレーターには人が乗っているようにも乗っていないようにも見えた。
均一なリズムで動くたくさんのエスカレーターからは、ゴウンゴウンと無機質な音だけが響いている。
上に向かってまっすぐに延々と続くエスカレーターに、足がすくんだ。
「え、ちょっと待って。帰りたい」
想像とはかけ離れた場所に、率直な感想が口をついて出た。
「早速それですか。気分屋ですね。説明を聞いていただければ、きっとこの部屋が好きになりますよ」
星頭は咳ばらいをひとつしてから、ゆっくりと続けた。
「ここでは何もせずとも時間が勝手に進んでいきます。あなたの乗っているエスカレーターが、人生の時間そのものなんです」
まったくピンとこない。「人生とは階段である」っていうたとえなら聞いたことはあるけど、人生がエスカレーターだなんてどういうことだろう。
疑問が顔に出てしまっていたのか、星頭はもう一度咳払いをした。
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