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届かない空にノスタルジー
「今夜は流星群が見られるんだって」
部活後特有のけだるさに抗いながら駅までの道を歩いていたら、ふいに親友がそう言った。
「流星群って、いっぱい星が流れてくるやつ?」
頭の悪い質問しか出てこない自分にげんなりする。
「そうそう。今夜19時かららしいよ」
「それ、あと少しじゃん!」
手に持ったスマホを果凛の目の前に突き出す。画面には18:55の文字が表示されていた。
「本当だ。じゃあ見てから帰ろうか」
頷いて近くの公園に直行する。
すべり台とブランコしかないしょぼい公園には、私たち以外誰もいない。高校生二人で堂々とブランコを占領した。
「はー。今日も1日お疲れ様」
ため息とともに足を投げ出す。
小さい頃は、ブランコを漕ぎ続けていればいつか天までいけるって、本気で信じてたな。今はもう漕ぐ気力もない。
「部活ももうすぐ引退だと思うと頑張れるよね」
「たしかに」
「でもそしたらすぐに期末テストがあるけどね」
部活引退かと再び感傷に浸ろうとしていたところで、嫌な言葉が耳に飛び込む。
「うわー。高3って忙しすぎない?行事だ、部活だ、テストだ。マジで休みたいんだけど」
「そうだね。あ、19時になったよ」
果凛の合図で空を見上げた。
青い光の粒が点々と散らばっている。
流れ星じゃなくても、大小さまざまな光は時間を忘れさせてくれた。
「ねえ、美潮。流星群来ないね」
首が痛くなってきたころ、隣で果凛がぽつりと言った。
「それな。あと5分だけ待ってみない?」
ここまできたら一目見るまでは帰りたくない。
部活で培ったのであろう根気強さのおかげで、首を両手で抑えながらもなお星空を見続けた。
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