不審な若者

3/5
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
俺の右手を優しく親指で擦る人 「会いたかった。どうしよ、嬉しすぎてやばい。」 こいつはヤバいやつだ。 ゾッとした俺は手を引っ込め、ドアを閉めようとしたが、その人はそれを阻止したのだ。 「やめ…てください。」   ドアの隙間に手を挟みこみ、こじ開けてくる。 「いや、誤解です!すみません、嬉しくてつい。…これ届けに来たんです!お願いします開けてください!」 「そこに置いといてください。」 「嫌です!」 (は?) 嫌とは何なんだろうか。 俺はこの不審な若者になぜ、そんなことを言われなければいけないのかが分からなかった。 「お願いします。あなたと話したいんです!」 「俺は、話すことなんてありません。」 「そこをなんとか!何でもしますから」 わけがわらない。誰だお前は。 (とりあえず、離して欲しい) そんな小競り合いを行っているのだが、最後には決着がつくもんで、結果俺の勝利だった。 久しぶりにつかった体力は底をつき、扉の鍵をかけたと同時に俺は床に尻もちをついた。 ようやく勝ったと思った玄関先での戦闘だったが、ドンドンドンと外からおんぼろアパートのドアを叩く安っぽい音が聞こえ、さっきの人の声だろう 「あなたが話してくれるまで待ってます。」 と、小さく言い残した。 (俺は絶対出ないぞ。)
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!