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俺の右手を優しく親指で擦る人
「会いたかった。どうしよ、嬉しすぎてやばい。」
こいつはヤバいやつだ。
ゾッとした俺は手を引っ込め、ドアを閉めようとしたが、その人はそれを阻止したのだ。
「やめ…てください。」
ドアの隙間に手を挟みこみ、こじ開けてくる。
「いや、誤解です!すみません、嬉しくてつい。…これ届けに来たんです!お願いします開けてください!」
「そこに置いといてください。」
「嫌です!」
(は?)
嫌とは何なんだろうか。
俺はこの不審な若者になぜ、そんなことを言われなければいけないのかが分からなかった。
「お願いします。あなたと話したいんです!」
「俺は、話すことなんてありません。」
「そこをなんとか!何でもしますから」
わけがわらない。誰だお前は。
(とりあえず、離して欲しい)
そんな小競り合いを行っているのだが、最後には決着がつくもんで、結果俺の勝利だった。
久しぶりにつかった体力は底をつき、扉の鍵をかけたと同時に俺は床に尻もちをついた。
ようやく勝ったと思った玄関先での戦闘だったが、ドンドンドンと外からおんぼろアパートのドアを叩く安っぽい音が聞こえ、さっきの人の声だろう
「あなたが話してくれるまで待ってます。」
と、小さく言い残した。
(俺は絶対出ないぞ。)
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