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「わー。結構なゴミの量ですねー」
「…わっ、わかってる。でも、外に出るのが苦手で」
「だから、テイクアウトだったんですか」
「はい。人と関わるのも苦手で…どうしようもない人間なんです俺は」
俺達は玄関周りのまだ、ごみが余りない場所で座って話をした。
意外にも、彼との会話は沈黙を伴わなかった。
「あなたは僕の尊敬する人です。どうしようもない人間なんかじゃありません。」
「…そんなことない。俺は…そういえば、君はなんで俺が雲雀だって知ってるんですか?、あれは俺の雅号で…」
彼は俺の手を両手で握りしめた。
「僕はあなたの作品に一目惚れしました。僕の人生を変えてくれた先生にどうしても会いたくて、ここまで来ちゃいました。」
真剣な顔で言う彼に、また、罪悪感を抱いた。
彼が尊敬しているのは、今の俺ではなく、昔の俺だ。彼の目の前にいる、今の俺は道端の小石とそう変わりない。
「…君が言っているのは、俺の過去の栄光のことでしょう。今の俺ではありません。」
俺は彼の手を払い除けた。
「…昔の俺はもう死にました。」
俺は苦しくて下を向いた。
また襲ってきそうな発作を抑え込み、胸に手を当てて、呼吸を整えた。
「…では、僕が生き返らせます。」
「は?」
俺はまた、さっきと同じように目を見開き自分よりガタイが良く、身長も高い彼を見上げた。
「僕が、先生を養います。だから、一緒に住みましょ。財力には自信があるので、不自由はさせません」
口を開けた俺に、彼はニコっと笑い
「先生の作品をまた僕に見せてください」
と、再び俺の手を暖かくなった手で包み込んだ。
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