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お引っ越し
と、まぁ、なんやかんや結構ありまして。
俺は今超豪邸の前に立っている。
遡ること2日前、自称俺のファンだと言う配達員さんに同居を持ちかけられた。それも、キラキラとした目と顔(イケメン)を向けられ、手を握りしめられた。
その時の俺は頭が弱かったのだろう。
いや、もとから馬鹿だけど。
俺は、そんなキュルンと効果音がなりそうな彼に嫌だと拒否することができなかった。
そうして今、俺はあのゴミ屋敷を抜け、彼の家、もとい豪邸の前に突っ立っているのだ。
「いや、顔が良くて金持ちって……」
「どうしたんですか?」
「うぎゃっ」
気配がしなかった。恐るべきイケメン
「…あの、そういや。名前聞いてなかった」
「あ!すいません。言ってなかったですね。僕は一色弘晃(いっしきひろあき)って言います。」
「…一色って」
「もしかして知ってます?」
「『一』に『色』だよな?」
なんとなく、彼の表情がムスッとした気がしたが、すぐに元通りになっていた。気の所為か?
「あーはい。両方とも小学生で習う簡単な字です。」
「…簡単じゃない」
「ん?なんですか?」
「なんでもない。」
彼の頭には疑問符が湧いていただろう。そんな、彼を俺は無視し、自分も簡単な自己紹介をした。彼はクリスマスプレゼントをもらった子供のようにキラキラとし「裕一さん、裕一さん」と繰り返していた。そんな彼に俺も可愛いなと思ってしまったこの頃にはもう既に絆されていたのだろう。
「じゃあ、行きましょう!裕一さん」
「…うん」
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