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「おじゃまします。」
外観からみてこれはすごい豪邸だと思ってはいたが、いざ中に入ってみるも、内装も凄く凝っていて家具はアンティーク調で統一されていた。
そして、俺の家には山ほどあったゴミは全く無く、ホコリすらない。
(うゎ、俺が一番の粗大ゴミだわ)
「中、案内しますね!」
「…お願いします。」
ここで俺は油断していたのだ。この無駄に広い屋敷を端から端へぐるぐる歩き続けるには俺の体力ではまったく足りなかったことに。
半分くらいまわったあたりで、体力切れとなりその場にしゃがみこんだ俺に、一色は「抱っこしましょうか?」とかなんとか言ってきたから、丁重にお断りした。
(こいつはアホなのか?)
呆れてやった。
「さっき紹介した裕一さんの部屋に荷物は運んであるので、あとは自由に使ってください。」
ちなみに俺の部屋は和室だった。
「…はい。ありがとうございます。」
「はい!…ていうか、裕一さんのほうが年上なんですから、敬語じゃなくていいですよ?」
「わかった。…一色さんも俺なんかに「弘晃。」
…弘晃くんも敬語じゃなくていい…よ」
「僕は裕一さんのこと尊敬してるんで、このままでいいです。」
「そう」
最盛期の俺のことを尊敬してるらしいけど、どこをどう尊敬しているのか謎だ。
俺がちゃんと生きていたのは4年前ぐらいだから、19ぐらいの作品か?
でも、分からないのは俺の専門は書道だ。2歳しか離れてないからさほどカルチャーショックとかないだろうが、同い年ぐらいで書道に興味を持つのか?いや、少なくとも俺のクラスメートは書道の授業は嫌っていた。
わからない。
分からないのなら、聞けばいいじゃん。
ということなのだが、一色と俺の今の親密度ではなんとなくまだ聞くことができないでいる。
結局俺はなんでもいいじゃん。で片付けていた。
「あ!もうこんな時間だ。裕一さんも疲れましたよね?ご飯にしましょ」
俺の腹はグギューと変な音を立てた。
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