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気が付くと洞窟の壁に寄りかかっていた。体中に痛みを感じたが、恐らく体を強く打ちつけたからだろう。恐る恐る目を開けると、洞窟内は瓦礫でメチャクチャになっていた。
洞窟は総延長20m程度の小規模なものである。そのため、洞窟の端に飛ばされた医療器具や雑貨が散乱していた。
真っ先に気になったのは小夜子の事だった。爆発の瞬間に居たであろう場所を探したが、見つからなかった。
「私が気絶している間に出ていったのかな……?」
とり残されたという虚しさを感じつつも、多少安堵したそんな時だった。
洞窟の中ごろに置かれた簡易ベッドの一画にぼろ布が干されていた───、と見た瞬間は思った。
「小夜子……?」
そんなはずはない……。あれが小夜子だって?悪い冗談だよね?あれはただのぼろ布だよね?
私は自分に何度もそう言い聞かせながら、恐る恐る近づいた。
「小夜子、そろそろ冗談は終わりにしよ?私十分驚いたからさ?」
もうだめだ。これ以上自分に言い聞かせても、目の前の現実は変わらない……。
「ね、ねぇ、お願いだから……、お願いだから……。目を覚ましてよ!!!」
小夜子は亡くなっていた。
感情が追い付かぬまま、私は小夜子の遺体を抱え、彼女が引っかかっていたベッドに寝かせた。幸い顔に大きな傷はなく、きれいな死に顔だった。
「ひとりぼっちかぁ───」
小夜子の死を目の当たりにし、この言葉が自然と湧き出てきた。
どうして……。小夜子が死んだんだよ。何で私泣けないの?そっか、私も少ししたら小夜子のいる所に行けるからかな……。
自嘲的な笑いがこみ上げてくる。もうどうしようもない。敵軍はもうそこまで来てるだろう。いや、もうそんなこともどうでもいい、すべてがどうでもいい───。
「女学生さん……」
唐突に私を呼ぶ声がした。同時にその声には聞き覚えがあった。
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