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次郎と文の間には女の子がひとり生まれた。
名前は詩。
でもその後は望んでいたもののなかなか二人目には恵まれなかった。
次郎は詩を大事に育てようと文に言った。
その時の文の申し訳なさそうな、嬉しそうな、そして安心したような、色々入り混じった文の顔を忘れることは出来なかった。
日に日に詩は文に似てニコニコする愛くるしい娘になっていった。
夫婦は詩とその時その時、一度しかない子育ての瞬間の日々を楽しんで暮らしていた。
親として人並みに子育ての苦労も経験しながら夫婦としての絆も強くなっていった。
時は経ち、娘の詩も30歳になり、結婚はどうなんだと次郎はヤキモキしていた。
文はと言うと、本人がその気になれば連れて来ますよなどとつれない返事をするばかりで、あまり心配していない素振りだ。
次郎は詩には、いつまでもそばにいて欲しい反面、貰い手がないと言うのもなんだか親として不本意で見る目がない男ばかりだと思っていた。
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