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プロローグ 双葉の分かれ道
夕日が眩しく照らす近所を、俺は駆け回っていた。
兄が、兄の葵が、どこにもいないのだ。
「お前生意気なんだよ!」
「なんか言ってみろよ!」
「…………」
俺たちの通う小学校近くの公園。各所を探し回った末にやっと辿り着く。
葵が自分よりガタイのいい男子三人に囲まれていた。
バキッ!
「…………」
ドサッ。
拳が葵の頬に叩き込まれる。葵は地面に転がった。
胸ぐらを掴まれても、顔面を殴られても、葵は何も言わない。ただ睨みつけるだけだ。
「葵をいじめるなぁ!」
ドガッ!
「ぐわっ⁉︎」
「うおっ⁉︎」
ズザザッ!
俺はその中の一番大きい男子に飛び蹴りを喰らわせた。
飛び蹴りをもろに受けた相手は、他の男子も巻き込んで砂の地べたに倒れ込む。
「茜!」
葵が目をまん丸にして、俺の名前を呼ぶ。
「大丈夫か、葵!」
俺は尻餅をついた葵を背にして立った。
「うわ、茜だ!」
「やっちまえ!」
体勢を立て直したいじめっ子たちの標的が、葵から俺に向く。
三対一。
多勢に無勢でも構わない。
葵は、俺が守る。
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